大江戸えころじー事情
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No.2003057 2003/12/22
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大江戸事情シリーズの第7冊目(まだ紹介していませんが、6冊目に「大江戸生活体験事情」があります)です。江戸時代に生きてきた先祖は、未舗装の道路を空調機代わりにしていたり、着古したゆかたを、おむつまで使い尽くしたりと、身の回りのものを有効利用していた。 石油や自動車を使う現代人は、楽な生活を手にした。が、果たしてこのまま科学が発達しさえすればいいのか。物質社会のいまだからこそ、必読の書。エコロジーとは、「生態学」のことですね。拡張解釈しても、生態と環境との関係を研究する学問です。 それが、質素や節約を意味する「エコノミー」や、燃料の「エネルギー」と音が似ているからか、『エネルギーの節約』のような意味合いで使われていることがあります。もちろん、間違いです。 まあ、生態を応用してエネルギーを節約する、そんな意味合いならば、まったくの間違いはないかも知れませんが、それを意識してこの本のタイトルをつけたのかどうかは、ちょっと 疑問です。もしかすると、この本の作者は、誤解して使っているのではないかとさえ思えるほど、この本に書かれている内容は、生態学を意味するエコロジーではなく、物やエネルギーの節約、 つまり、省エネの話題ばかりです(^ム^;) |
よろずや平四郎活人剣
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No.2003056 2003/12/20
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今回も、この本そのものよりも、作家「藤沢周平」氏の紹介をしたいと思います。 突然に亡くなられ、すでに7年近くも経ってしまいましたが、さすがはカリスマ的な人気作家です。本書は、装丁を新しくして文庫での再販です。 神名平四郎。知行千石の旗本の子弟、しかし実質は、祝福されざる冷や飯食い、妾腹の子である。思い屈し、実家を出奔、裏店に棲みついたまではよいのだが、 ただちに日々のたつきに窮してしまう。思案の揚句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲る。……喧嘩五十文、口論二十文、とりもどし物百文、よろずもめごと仲裁つかまつり候。藤沢周平氏の書く文章は、20世紀後半の日本作家の中でも、その美しさに関しては筆頭ではないかと思っています。 アイディアは優れてユニークではあるが、文章の汚い作家が多い昨今、藤沢周平氏の文章は美しく、小説としてのすばらしさだけではなく、 文章の美しさに感動することさえあります。 もう少し長く生きられ、もっと作品を残して欲しかった。そう思う作家の一人です。 |
劇盗二代目日本左衛門
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No.2003055 2003/12/13
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この本そのものの紹介というよりも、作家「佐藤雅美」氏を紹介したいと思います。まあ、今更と言われるかも知れないほど、
すでに一流の書き手でいらっしゃいますけどね。
関東取締出役、通称八州廻りの桑山十兵衛は悪党どもを追いかける毎日だ。そんなある日、昔の大盗賊日本左衛門の二代目らしき盗賊 が関東各地を荒らしまわる。十兵衛たちは必死で一味を追跡するも行方はわからず、探索で浮かんできたのは、虚無僧の影、そして老中と繋がる 儒者・杉崎斂堂。一連の事件の真相は!?その名前から、てっきり女性作家と思っていました。その割には、骨太の時代小説を書くと、舌をまいていたいたのですが……。男性でした(^ム^;) この「八州廻り桑山十兵衛」シリーズは、私の大好きな捕物帳です。この本が文庫としての3冊目、これからが楽しみなシリーズです。 |
三国志
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No.2003054 2003/12/06
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それほどは熱心な愛読書家ではなかった私が、本読み中毒に感染するきっかけの一つがこの本です。
約二千年前、中国は後漢の代。政治の腐敗はその極に達し、各地に跳梁する黄巾賊と役人の専横に民衆の生活は目をおおう惨状を呈していた。文庫としては分厚い部類の本であってなお、8巻を必要とするこの小説を読み終えるには、かなりの忍耐力と時間が必要です。 たまたま、片道3時間の超長距離通勤者だったことから、比較的早い期間で読み終えることができました。だらだらと読んでいたのでは面白さも半減していたでしょう。 電車での通勤では、揺れにまかせて転寝をしていると風邪を引きます。眠気の防止にと、展開が速い「捕物帳」を選んで読むことにしました。 それがかなりの期間続き、すでに紹介している「鬼平犯科帳」や「御宿かわせみ」などの時代小説に進み、この「三国志」ですっかりと読書中毒者になったのです。 さて、今、この本を全巻を通して再度読むことができるのかどうか……。まったく自信がありません。まあ、定年にでもなったら、それを記念して読み返すのも良いのかな。そんな風に思っています。 |
鬼平犯科帳
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No.2003053 2003/12/04
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時代小説フアンの私ですが、そうなってしまった原因を作ったのがこの本です(^ム^;)
切り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵。「おしの十蔵」ではじまり、文庫にして24巻目、未完の「誘拐」で終わる『鬼平犯科帳』は、『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』と並ぶ、池波正太郎氏の代表作です。 単なる小説というよりも、芝居のシナリオのように、読み進めるにつれ、情景が心に浮かぶような、映像的ともいえる独特の文章は魅力的です。 このシリーズがなかったら、私の読書傾向は確実に変っていたでしょうね。そんな意味では、人生そのものにい影響を与えてくれた本です。 |
御宿かわせみ
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No.2003052 2003/11/29
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女性の時代小説の書き手をいえば、なんといってもその第一人者は平岩弓枝氏ですね。
江戸大川端、柳橋のはずれにある小さな旅籠「かわせみ」。そこに投宿する様々な人たちをめぐっておこる怪奇な事件の数々。その渦の 中にまきこまれながら、宿の若い女主人るいと恋人神林東吾の二人は、たがいに愛をたしかめあい、次第に強くむすばれていく……江戸の下町 情緒あふれる筆致で描かれた捕物帳仕立ての読みきり連作八篇名シリーズ、「御宿かわせみ」の第1冊目がこの本です。 文庫だけでも、すでに27冊目が発行されているこのシリーズは、捕物帳でありながら、主人公が男性ではなく女性のるいであること、 作者が、当時としては珍しい女性作家であることとなどから注目を集めたものです。 平岩氏の文章は素敵です。作家としての技術レベルが高いだけではなく、女性であることがいやらしくなくにじみ出ていて魅力的なのです。 どこまで続くのかわからないこのシリーズですが、最後まで愛読者を続けることは確実です(^0_0^) |
利休啾々
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No.2003051 2003/11/24
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比較的堅い本ばかりを紹介してきたこの「本大好き」ですが、柔らい愛読書も順次紹介します。 私は時代小説が好きです。それも江戸時代が良い。 歴史的な史実に基づいた歴史小説よりも、江戸の時代を背景にした小説が好きなのです。そんな意味では、この本はちょっと 好みとは違うのですが、1冊全てが利休の話ではなく、著者の最新の短編集ですので紹介しました。 時代小説が好きな理由を尋ねられると、答えずらいのですが、現在とは時代背景が違う江戸を舞台にすることから、不必要にリアルにならないからかも知れません。 現代を舞台にして書かれた小説を読むと、その背景に違和感を感じることが多いのです。まあ、同じ現代に生きているというだけで、全く違う背景を背負った作家が 書いている小説ですから、違和感があっても当然ですね。でもそれが、話の時代背景が違うことにより、違和感を感じなくなる。そんなところが、時代小説が好きな理由なのかも知れません。 最近になり、時代小説の作家に女性が増え、しかも、良い作品を書かれる方が多くなっています。この澤田ふじ子氏もその一人です。 女性だからと、女性を対象にした小説ではなく、むしろ男性向きの小説が多いそれらの作家の作品には、女性ならではの視点も感じられ、新しく感じます。 女性作家の時代小説。お読みになることをお勧めします。 |
モノ・マガジン
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No.2003050 2003/11/16
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戦後の高度成長からバブルと、発展を続け、元気一杯だったころの人気雑誌「モノ・マガジン」の300号祈念特大号が、書棚の隅にありました。 この本には、副タイトルが付けられています。「モノで綴る20世紀のタペストリー」です。20世紀の暮らしを支えた「モノ」を特集しています。 「モノ」という観点から見ると、おそらく、20世紀は、日本にとって最も多くの種類の「モノ」が開発され、生産され、消費された時代になるのではないでしょうか。この本には、 そんな「モノ大国」だった日本の集大成が詰まっているのです。 出版されたとき、2冊を買い、1冊を新品のままフィルムで密封しました。これがこの本です。 まだ開けるつもりはありません。もう20年ほどしてから開封しようと思っています(^ム^;) |
国民道徳論
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No.2003049 2003/11/09
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明治25年、120年ほど前に出版された本です。 明治25年というと、第1回の通常議会が開催されて3年目、日清戦争の2年前という時代です。 世相的には安定し、映画館が出来はじめたり、演劇の劇場があいついで開場するなど、明治維新の激震も落ち着き始めていた頃です。 おそらく、道徳にも緩みが見られる、そんな背景から書かれた本ではないかと思います。教育全書の第12編と印刷されていますから、 政治的な道徳論ではなく、教育的な道徳論であると思います。 「思います」と書いたのは、なにしろ、漢文崩しの文体なので読みにくい。拾い読みをしている程度なので、完読をしていないのです(^ム^;)。 これから、時間を見つけて完読をしようと、本箱から出してきたところです。 さてこの本の値段は「12銭」です。当時の記録を調べると、マッチ箱のラベルを貼る内職の手間賃が1日4銭(普通の人が1日700個なのだそうです) だったそうですから、3日分の金額です。現在の内職が1日3000円くらいと仮定して1万円近くの感覚ですね。本は高かったということだと思います。 |
神道
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No.2003048 2003/11/03
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宗教的には淡白な日本人ですが、その精神構造の根底には、「仏教」と「神道」が、紙にインクが染込むように色づいています。
しきたり、風習、そして、ものの感じ方……。宗教一般における「神」の考え方から、日本の神話、それがなぜ創られ伝えられているのか。 日本各地に点在する神社の紹介やそれぞれの特徴といった一般常識から、参拝するときの作法について。 現代日本の生活習慣に残る神道の伝統まで、幅広く紹介している本です。知っていて役に立つ、日本人としての基礎知識の本でもあります。 |
お江戸の意外な「モノ」の値段
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No.2003047 2003/11/01
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時代が違えば、同じものでも値段は違う。それが、通貨の単位が違う異なった時代の値段となると、まったく違います。
「長屋の家賃はいくら?」「一ヶ月の生活費は?」「居酒屋の飲み代は?」「寺子屋の学費は?」特に知ってどうなるという知識ではありません。時代小説やドラマなどで、しばしばお金がでてきます。そんなお金の金額が、本当に 正しいのかどうかは疑問ですね。作家が適当に書いているのではないかと(おそらそうでしょう)疑うことってありませんか。 知っていると、「あ、いいかげんに書いてる」なんて判って、ちょっと楽しくなる。そうさせてくれる本です。 |
オールコックの江戸
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No.2003046 2003/10/25
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徳川幕府体制時の江戸、その生活風俗の記録は、数多くの研究者によって残されていますが、さて、外国人はどんな目で見ていたのでしょう。
十九世紀半ば、江戸−ロンドン間の文章のやりとりに蒸気船で半年近くを要した時代、一人の外交官が担う責任は、今日とは規格にならない ほど大きかった。そんな時代、日英関係の仕事は、初代駐日公使ラザフォード・オールコックの手に託されていたといってよい。本国と交わした書簡を史料に、筆者の見識を加えて書かれた新書です。 外交交渉を話題の中心とした書簡ですし、そこからうかがい知る江戸ですから、庶民の生活を扱った本ではありません。しかし、当時の武士である政治家の行動や考え方などにもおよぶ内容は、 興味深いものです。 作家の文章ではない、研究者のそれですから、読みにくいところもありますし、個人の意見が多く含まれてはいますが、得がたい資料であると思います。 |
大江戸ボランティア事情
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No.2003045 2003/10/24
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「江戸事情」シリーズの第5冊目は、「おたがいさま」の江戸事情です。
お上には頼らない、「おたがいさま社会」だからこそ江戸の生活は豊かだった。社会保険も年金制度もない江戸時代ですが、なぜか、老人が飢え死にした話は江戸では聞きません。皆がみんな、親孝行な子供を 持っていたはずもない。そもそも女性の少ない江戸では、一生独身で過ごす男性も珍しくはなかったはずです。 そんな江戸時代の庶民の暮らしと、教育制度、お金のかからない庶民の楽しみまでを、男性の目と女性の目の共著で紹介しています。 |
大江戸リサイクル事情
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No.2003044 2003/10/18
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「江戸事情」シリーズの第4冊目は、江戸時代のリサイクル事情を取り上げています。
人口百万を数え、近世では世界最大の都市といえる江戸。膨大な日常消費は草の根レベルの活発なリサイクルで支えられていた。生活のために必要なものは「衣・食・住」ですが、食を基準に現代と比べると、圧倒的に安かったのが「住」であり、逆に高かったのが「衣」 だったのではないかと思っています。一般庶民は新品の衣料品は高価でめったに買えない。江戸には、そんな庶民のための「古着屋」が多かったのも 江戸時代の特徴でしょう。「古着」はまさにリサイクルそのものですね。 その他にも、酒や醤油を詰めて運んだキャリアとしての「樽」も重要なリサイクル物品。「樽買い」などの職業は、これまたリサイクル業者です。 そんな、江戸時代のさまざまなリサイクル事情を易しく紹介してくれるのが、この本です。 |
大江戸テクノロジー事情
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No.2003043 2003/10/13
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後先が逆になりましたが、「江戸事情」シリーズの第2冊目の本です。
暦、和時計、からくり、錦絵、天文学、花火など江戸時代の様々な創意と工夫を紹介。江戸の人びとが、科学知識や技術を軍事よりも 遊びや楽しみの手段にそそいだ様子を生き生きと伝える。一般に科学技術は、軍事や戦争による負傷者を治療するための医学と共に発達したといわれていますね。ところが、島国であったことと、理由はともかく、鎖国をしていたことから、 軍事的な脅威をほとんど感じることが無かった日本。とりわけ、首都江戸は、軍事的な圧力をまったく感じることの無い平和な都市でした。 科学技術に対する興味は、文学や絵画、音楽に対する興味と同じく、人であれば持つ基本的な関心事項です。軍需がなければ民需にその知恵が活用される。 江戸時代の日本は、理想的な社会だったともいえると思います。 そんな江戸で花開いた独特の技術を、この本はやさしく解説してくれます。 |
大江戸生活事情
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No.2003042 2003/10/11
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すでに紹介している「大江戸えねるぎー事情」から始まる「江戸事情」シリーズの第3冊目の本です。
百万都市・江戸は、同時代の欧米の都市と比べ本当に遅れていたのだろうか?裏表紙のオフィシャルコメントで、ほとんど言い尽くされてしまっている本書の内容です。 生活者の観点から、江戸と同時代の西欧都市との比較という、ユニークな視点での江戸風俗解説本です。 |
豪商列伝
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No.2003041 2003/10/03
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個人が、富を蓄え、社会を支配するに至って例は数多くあります。その一方は武力勢力であり、もう一方は、豪商と呼ばれた人たちです。
近代巨大財閥の礎を築いた三井・住友・鴻池各家の創業者。豪富・蕩尽でその名を残す紀伊国屋文左衛門、奈良屋茂左衛門。農工生産の向上、流通改革、土木、治水、土地投資と開発、金融業。 時代が彼らを生み、彼らが時代を作った。豊富なエピソードを交え、時代の反映を演出した豪商たちの姿を追い、その巨富の哲学と経営手法を探る異色の商業史。時代小説やテレビドラマなどで、江戸時代の豪商が登場するものは多いですね。さすがに、明治以降の、財閥を作った人たちは、小説やドラマになることは まれですが、それらの偉人のスケールの大きさは、驚くほど。小粒が多い現代人と比較しても、人間的にも、魅力的な人物が多かったようです。 知っているようで知らない、そんな豪商たちの姿を、垣間見せてくれるのがこの本です。 肩のこらない平易な文体で書かれていますから、小説を読む気分で読めますよ。 |
易の話
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No.2003040 2003/09/27
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江戸時代の子供たち(武家が中心ですが)が、基礎教養として必ず学んだ「易経」の書ですが、現代人の私たちには、書名は知ってはいても読んだことの無い、そんな本ですね。
儒教の重要な経典として五経の筆頭におかれた『易経』は、神秘的な「占い書」であるとともに、深遠な哲学をもつ「思想書」でもある。日本人の精神構造の根本には、仏教がありますね。仏教は、インドで発祥して中国を経由して伝わりました。そんなことから、中国人の宗教も、人生観や倫理観も、仏教を 基本としている、日本人と同じだろうと、誤解している人が多いと思います。 しかし、実態は違いますね。中国人の主流の宗教は、儒教を含む道教です。そして、その根本にある経典が「易経」ですね。 好き嫌いは個人の自由ですが、たとえ嫌いでも、これからの社会は、中国と正面から向き合ってゆかなければならないことは事実です。中国に住む人たちの、 その思考の根本を理解することは、現代人としては必須の知識であると思います。それには、「易経」を学習することが良い。 この本は、その入門書です。 |
飛鳥
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No.2003039 2003/09/20
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古典的な新書に続いて、同じく岩波の新しい新書です。
新宗教・仏教の受容、相次ぐ激しい権力闘争を経て、律令国家の成立への向かう七世紀日本。その変貌の主要な舞台こそ飛鳥だった。 今はのどかな田園風景の中に、古代の宮殿跡や古墳、また謎を秘めた数々の巨大な石造物が点在する−そんな飛鳥の景観を愛し、歴史に想いをはせる人びとのための、 古代史研究成果を充分に踏まえた案内書。豊富な地図や写真をもとに、飛鳥川の上流の盆地にくりひろげられていたであろう、飛鳥の都を想う本です。 飛鳥の里は、最近はブームと言っても言い過ぎではないほど、数多くの遺跡が発掘研究され、徐々に解明されつつある古の都ですね。 実験によって確かめる自然科学とは違い、集めた資料をもとに、あくまでも人が想像して組み立てる考古学の世界です。 新たに発見された、たった一つの土器の欠片が、それまでの学説を一夜にしてひっくりかえしてしまう、そんな危うさのある学問ではありますが、それだからこそ魅力が あるのでしょうね。 一つの発明が、数百億円の利益を生む、そんな科学技術と比べ、解ったとしても、なんの経済的な効果は生まない。でも、そんな学問の世界に心を遊ばせる。これもまた、楽しいものですね。 |
知的生産の技術
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No.2003038 2003/09/14
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もっと早く紹介しなければいけなかった本ですが、すっかり忘れていました(^ム^;)
「知的生産」という言葉を生み出し、知的生産の技術文化を創造したのが、この歴史的な本なのです。 学校では知識は教えるけれど獲得のしかたはあまり教えてくれない。メモのとり方、カードの利用法、原稿の書き方など基本的な技術の訓練不測が研究能力の低下をもたらすと考える 著者は、根が年にわたる模索の体験と共同討論の中から確信をえて、創造的な知的生産を行うための実践技術についての提案を試みる。なにしろ、30年以上も前に出版された本ですから、現在ならば当然になっているパソコンを使っての知的生産はまったく触れられていません。触れることすらできなかった 時代ですから、しかたがありません。京大式カードを覚えていますか。京大式カードは、この本の中で提唱され、一世を風靡しました。 純正アナログのめくるめき世界(^ム^;)。紙と鉛筆の世界での知的生産も、今、読み返してみるとそれはそれで新鮮な感動を呼びます。 実は、この本が、近所の書店の「入手困難な本(絶版もしくは絶版直前)」コーナーに置いてあり驚きました。歴史的な書籍です。まだ持っておられない方は、手に入れて おくことをお勧めします(^0_0^) |
江戸東京年表
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No.2003037 2003/09/06
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1590年に家康が江戸に入城したときから、1993年までの、江戸・東京に起こったさまざまを記録した年表です。 これは1993年版ですが、2002年に増補版が発行されていますので、こちらは2001年までの記録が 掲載されているのでしょう。 本書の特徴 現在の東京都にあたる地域で、江戸のはじめから現代にまで起こった出来事をまとめた、他に類のない年表です。 政治・経済にかたよらず、事件や流行、生活風俗など、暮らしに密着した記事を中心に編集してあります。社会に起こった政治的な事件や、犯罪の記録も参考になりますが、その当時に流行った流行的な事象の記述が面白く、まさに「他に類の無い」年表です。 時代小説を読む時など、時々参考にして見ています。時代考証に正確な作家と、まったくいいかげんな作家の差がわかったり しちゃいますからね(^ム^;) |
江戸東京博物館
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No.2003036 2003/08/30
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東京都、JRの両国駅に隣接し、異様な形の巨大なビルが建っています。それが、江戸東京博物館です。 第一部では、約9000平方メートルの広大な常設展示室を紹介。ここでは実物大の復元建造物や縮小模型、映像、さらには屏風絵や浮世絵版画、錦絵などが数多く展示され、 江戸開府以来400年にわたる人々の生活を楽しくそして詳細に知ることができる。さらに震災、火災、戦災などによる数度の危機に瀕しながらも逞しく再生し続けた都市の姿も見ることができる。文庫本のサイズに、コンパクトにまとまった江戸と東京がここにあります。 江戸東京博物館の、豊富な収蔵物・建造物の写真が多数載っていてさながらグラフ誌のようです。 江戸東京博物館の見学ガイドブックとしても、江戸・東京再発見の案内書としても、価値のある一冊ですよ。 |
江戸行商百姿
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No.2003035 2003/08/28
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江戸時代はまさに、行商人の世界でした。江戸時代民族の生活の様々を、ベテラン、花咲一男氏が紹介する本です。 江戸の一日は行商の声で明け、行商の声で暮れる。 「行商」とは広く該当で商売をする人々の意味である。 本書ではたべもの、くすり、道具、おもちゃ等、江戸時代、庶民の日常生活を支え、市井を行き交うさまざまな行商人たちの姿を一堂に集め、ユニークな解説と資料としても貴重な図版を収録して紹介する。江戸の商売図会は、文庫本でも発売されていますが、こちらはハードカバー、色刷りの図版が豊富に掲載されています。 資料として一級の本であると、私は思っています。 |
写真で見る江戸東京
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No.2003034 2003/08/24
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明治維新による幕藩体制の瓦解と、終戦による米軍による統治、東京オリンピック以降の急速な発展から、ほんの100数十年前の 江戸東京と、現在のそれは、まったく別の都市といっても過言で無いほどの変化をしてしまっています。 そんな失われた江戸東京であっても、写真という技術をを使って現在にも残されています。雑誌などで、それらの断片を目にすることも珍しくはありませんが、 それらが、まとまった形で本になっています。 徳川15代の居城として、その権力の象徴であった江戸城の威容は、どれほどのものだったのか。そして大名屋敷をはじめとする町のあえいさまは、どのようなものだったのか。 幕末にもたらされた写真術は、浮世絵や絵地図ではうかがうことのできないリアリティをもって、江戸城の中心とした江戸の景観を現出させてくれる。そして官庁や銀行などの洋風建築が建設されて 文明開化してゆく東京の姿が、写真術の発達とともに、まざまざととらえられ、今日に残された。人工着色によってカラー化された写真は、”夢の中の都市”といった趣さえある。古きよき時代=江戸東京を写真で散歩する。全体のほぼ半分が、取り壊される前の江戸城の写真です。石組みの上に乗っている建物は、目雄図が基本ですから、意外に思えるほど質素な建物です。残念ながら室内の写真がありません。すべてが外からの撮影、つまりは 風景写真です。 この写真集を見ていて驚いたことがあります。江戸城の写真ではなく、町屋の建物ですが、末期とはいえ江戸時代に、障子にガラスが使われているのを見ることができたことです。江戸時代ならば、 障子は「紙」とばかり思っていましたが、すでに「板ガラス」が、富裕な商家とはいっても使われていたということは、新鮮な驚きでした。 明治政府の政策から、ことさら江戸時代を封建的な暗黒時代と洗脳教育を受けた明治時代の人たち、その影響を受け続けている現代日本人ですが、江戸時代は暗黒ではなかった。ガラスも使っていたし、肉や牛乳も口にしていた。ワインすら飲んでいた庶民もいたのです。 豊富な自然と戦争の無い平和な江戸時代。もっと正当に評価する必要がありますね。 |
江戸切絵図散歩
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No.2003033 2003/08/21
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江戸時代、数多くの区分地図が発行されています。 私も、復刻版ではありますが、嘉永年間に発行された尾張屋版の切絵図全十八枚を持っています。 地域別につくられ、形態に便利な「切絵図」は、私のような、江戸期を舞台にした時代小説を書いているものにとっては、欠かせないものだ。私は「切絵図」と共に毎日を 送っているといってもよい。この本は、近吾堂版の切絵図を中心に、絵図と現代の東京都を比較しつつ池波氏の幼い頃の経験を含めて語る、絵図と写真と随筆です。 江戸幕府を倒した明治の政権により、不当にも悪しき汚名を着せられた徳川幕府の江戸、実は、庶民が活き活きと暮らしたすばらしき江戸、その姿を、筆者の 思い入れを込めて綴られた、江戸東京大好きな人に贈る癒しの本です。 江戸文化再発見、現代の東京にも、人の心の通う通りも坂もある。東京再発見をしてみませんか。 |
ヒンドゥー教
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No.2003032 2003/08/10
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南アジア一帯に広く信じられているヒンドゥー教、その中心は仏教発祥の地であるインドです。仏教が、発祥地でありながらインドで定着できなかった背景には、ヒンドゥー教があったからです。 仏教はもちろん、キリスト教や最近ではイスラム教が話題に上ることが多い日本ですが、ヒンドゥー教についてはめったに話題になりませんね。どんな宗教なのか、常々、知りたいと思っていました。 弁財天信仰、輪廻転生の思想などヒンドゥー教は、直接に、あるいは仏教を通して、以外にも古くからの日本人の暮らし、日常の信仰、思想に少なからぬ影響を与えてきた。 本書は、世界四大宗教の一つでありながら、特定の開祖もなく、核となる聖典もない、いわばとらえどころのない宗教の世界観を日常の風景から丹念に追うことによって、 インド社会の構造から、ガンディーの「非暴力」の行動原理までも考察する。ヒンデゥー教に似ているのが神道ではないでしょうか。同じように、開祖も聖典もない。そして、ヨーロッパにも、そんな「神」への思想がありますね。 神はただ一つしか認めないはずのキリスト教徒のヨーロッパ人でさえ、魔女やドラキュラや、妖精の存在を、認めている。 哲学に基づく近代宗教の背後に、五感で感じる「神」があり、宗教がある。その顕著な宗教がヒンドゥー教ではないだろうかと思っています。 タイを旅行したときに、仏教国でありながら、その背後にヒンドゥー教を見ました。仏教寺院にヒンドゥー様式の像が同居しているのを目撃し、その底力を感じたのです。 まだ読み始めたばかりですが、そんなヒンドゥー教を正しく理解したいと思っています。 |
時代風俗事典
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No.2003031 2003/08/02
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映画やテレビの時代考証家である林氏がまとめた、江戸時代を中心とした時代考証の事典です。 知っているようで知らない 歴史上の日常生活場面の考証 映画・テレビで見知った常識はいかに嘘が多いか。江戸時代研究の第一人者が500点の風俗画、図版によって、トイレ、風呂から結婚生活まで、 微妙に描く記帳な小項目事典。とても良くまとまった労作です。まさに、江戸時代のさまざまを、多くの資料や図版を根拠に解説している本です。 ただ、あくまでも現代の人の書かれたものですから、拠りどころは過去の資料です。本人の経験ではない。また、専門家とはいっても勘違いはある。 そもそも、時代考証という学問そのものが、一種の考古学ですから、今ある資料からの推測です。新たな資料が発見されたりすると、 それまでは正しかったことが間違いになる。それが宿命ですからしかたがありません。 この本は、1冊に集約された貴重な本ですが、言うまでも無く、これ一冊で済むものではありませんね。 |
馬琴一家の江戸暮らし
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No.2003030 2003/07/29
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江戸文化、それは庶民文化ではあったのだけれど、その背後には、庶民化したインテリ武士のサポートがあった。そんな庶民派武士の 代表選手が、「滝沢馬琴」です。 いわずとしれた伝奇小説『南総里見八犬伝』の作者滝沢馬琴は、実に具体的かつ詳細な日記を残している。長男の嫁の路も、馬琴のあとをついで同様の日記を書き続けた。 下級とはいえ武士であることを意識し続けた馬琴も、隠居後の生活は町人のそれにほぼ近い。家族の結婚、お産、離別、死別から台所事情、近所づきあい、祝儀のやりとりまで、 十九世紀中頃を生きた江戸市井人たちの四季折々を垣間見る。日記は面白いですね。 普通に日記というと、人には見せるものではない、プライベートな記録の世界ですが、そうでは無い日記があります。 他人に見られることを前提とした、文豪たちの日記などが、その代表的なものです。 読んでみて、この馬琴の日記は、それらの中間のような気がしました。記録的な面と、興味深い読み物としての側面です。 この「本大好き」では、江戸時代のさまざまな事々を記録した本を数多く紹介していますが、この本は、それぞれの時代の生活を記録する資料とは 言いがたいほどの面白さのある本でした。 「いよ〜ぉ、馬琴」、一声かけたい。そんな気にさせる本ですよ。 |
季語の底力
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No.2003029 2003/07/03
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五、七、五、の文学。俳句を書いてみたい。いえ、吟じてみたいと思いながらも、それがどんな文学なのか解らないまま50年を生きました。 短いからこそ、凝縮しているからこその美学。今、最も知りたい分野です。そのシンボルが「季語」ですよね。 季語は俳句に限定されるものにあらず、日本人の精神風土を映し出す鏡である。気鋭の俳人が、単価、小説、茶の湯、和菓子など、さまざまな分野から季語に凝縮された日本文化のエッセンスを汲み上げ、端々しい筆致で描く。 現代生活で薄れつつある日本古来の季節感を再発見しつつ、季語の持つアクティブな息吹を味わえる一冊。季語とはなんだろう、昔から思っていました。 俳句は、季語が入っていることが条件です。句を作っても、季語が入っていないとそれは俳句ではないといわれてしまいます。 でも、その季語と言ってももそれは一つの「単語」です。無数にある単ですが、「季語」と季語ではない単語がある。では、だれがそれを「季語」と決めたのでしょうか。 それが私の不思議でした。そして、解ってきたことがあります。高名な俳人と呼ばれる人が使うと、それは「季語」になり、無名の人が使うと、「季語がない」と言われる。 かなりいいかげんなものなのだと解ったのです。でも、だからといって、俳句そのものがいい加減ではない。言葉も文学も進化する。能力のある俳人ならば、普通の言葉を季語に昇格させる 権利がある。そう理解することにしました(^0_0^) この本は、そんな七面倒なことが書かれている解説本ではありません。 生活に根づいている普通の言葉のなかにも「季語」があります。そんな「普通の言葉の季語」を、生活観、季節感とともに、素敵な俳句を例にして、著者の感性のスパイスを存分に振りかけ題材として書かれたエッセイです。 気軽に、至福の文学芸術に触れられる、暖かい本です。 |
武士の家計簿
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No.2003028 2003/06/22
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武家の家計簿を探していた筆者が、偶然、古書店からのカタログの中に発見した武家文書の中に、江戸時代から明治、大正にかけての家計簿を発見したのが、本書を 書くきっかけになったようです。 「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が例を見ない完全な姿で遺されていた。国史研究史上、初めての発見と言ってよい。 タイム・カプセルの蓋を開けてみれば、金融破綻、地価下落、リストラ、教育問題……など、猪山家は現代の我々が直面する問題を全て経験ずみだった! 活き活きと復元された武士の暮らしを通じて、江戸時代に対する通念が覆され、全く違った「日本の近代」が見えてくる。筆者は、過去には、このように詳しく武家の家計の状況を記録したものはないと書いていますが、すでにこのコーナーで紹介している「幕末下級武士の記録」には、かなり 詳しく記載があります。この本が唯一というのは、筆者の思い込みと私は感じていますが、ただし、一般武士の記録とは違い、この猪山家は、会計の専門家の家柄であった らしく、記録は詳細にわたり専門的な分析をも含めてなされていること、30年以上にわたる長期間の記録がほぼ揃っているという意味では、筆者が感動するくらいに、貴重な記録なのでしょうね。 その古文書を下敷きに、筆者の分析した内容を加え、江戸末期から大正時代にかけての人々の生き様をわかりやすく解説した本書は、なかなかの好書です。 最近の新書ブームは、このような素敵な本が手軽に入手できるのですから、うれしいことですね。
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中国の旅、食もまた楽し
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No.2003027 2003/06/15
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中国を旅する、そんなテーマで書かれたエッセイを集めた本です。しかし、そこには、食の根源としての中華料理があります。 中国は「地大物博」の国。広い大地には物があふれ、見どころ、そして食べどころが満載だ。北はハルビン、南は海南島、西はカシュガル、トルファンまで中国大陸を味わいつくす一大紀行。 中華世界への薀蓄の広さ深さは、まさに大陸級の邱サンだからここまで書けた。もちろん中国旅行定番の上海、北京、香港もじっくり紹介。襲名中華料理店も実名で登場、食いしんぼにもたまらない一書。裏表紙の説明で、ほとんど言い尽くされている本書ですが、ただ単に食にはとらわれない、文化や歴史までがちりばめられた、邱氏ならではの 中国書です。 複雑な背後関係を持つ日本と中国ですが、難しいことは抜きで、異文化中国を楽しんでしまうおおらかさも、今の日本人には必要なのではないかと思わせてくれる好書です。 ブランデーでも飲みながら、のんびりと読んで欲しい本です。 |
世事見聞録
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No.2003025 2003/05/24
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序には、文化十三年と年号が記された、風俗随筆であり、見聞録であり政論です。 寛政の改革で引きしめられていた風俗が崩れて、じゅん爛たる化政文化が起ころうとする十一代将軍徳川家斉の時代に、武士をはじめ社会の諸階級の内部矛盾・弊害を見分別に帰すとともに、それに対する政策として富の平均化と 風俗の匡正を提言した書。中華層身分の状況を詳述した風俗随筆であるにもならず、卓抜な政論としても知られる。「武士」「百姓」「寺社人」「医業」から、「遊里売女」「日本神国」「非命に死せる者」など、明確に区分けして書かれた、文化年間の風俗や社会矛盾などを痛烈に書き綴った本書は、 研究機関の蔵書として散逸し、まとまった形では出版されていなかったのですが、京都大学の本庄教授の手により収集校訂、昭和5年に出版されました。 この文庫は、その書籍を定本としています。 この筆者である「武陽隠士」とは、もちろん偽名です。それが、誰であったかは今でも不明のままですが、江戸から南の方に居を構えいたらしい、旗本や藩士ではなく、教養ある 浪人か、内容から推察し公事訴訟を職業とする町人であったのか、謎のままなのも面白い。 「日本神国という事」の章では、明治以降の、天皇制度における「神国」という概念ではない、あくまでも「徳川幕府絶対性」の基での「神国」である、しかも、本書が書かれた頃よりも、 さかのぼること200年、徳川家康存命時代の「神国日本」を、理想と国と考えての記述であろうことがうかがい知れます。 この主の「風俗随筆・見聞録」は、硬いものから柔らかいものまで、数え切れないほどありますが、それぞれ、書かれた時代や、筆者の置かれている地位身分が反映されていて興味深いものですね。 |
江戸食べもの誌
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No.2003024 2003/05/18
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飽食の時代と言われて久しい昨今です。冷凍流通のシステムが発達し、国内の産品はもとより、世界中から食材が入ってくる。 街のあちこちに、中華料理はもちろん、韓国料理やインド料理、フランス料理にエスニック料理、あらゆる食べものが食べられるように なった現代です。 どこから見ても和風の割烹でまで、フランス料理まがいの料理が、板前のオリジナルとしてでてくる、まあ、すばらしいことですけどね。 しかし、日本料理の原点は江戸時代にあることは明白です。巨大都市「江戸」の庶民が創りあげた日本料理ですね。そんな、江戸庶民は、どんな食べものを食べていたのだろうか、 この本が、解明してくれます。 「ひな祭り皆ちっぽけなくだを巻き」一般に世界の有名な料理は「王宮料理」ですね。 中華料理がしかり、韓国料理もタイ料理なども、一般庶民が食べている料理が基本ではない。まあ、庶民料理でも有名なものはありますが、それはごくわずか、 ほとんどの高級料理は特権階級が、飽食のあげくに考え出した(そんなご主人様を満足させるために、料理人が考えたのですが(^ム^;)料理です。 ところが、日本料理はちょっと違う。日本では、皇室料理や将軍料理なんて聴いたこともないですね。特に江戸時代は、庶民の料理、百歩譲って、庶民の中の裕福な商人が 愛した料理が、日本料理を完成させたのです。その原点の一端が、この本には書かれています。しかも、川柳や狂歌などが散りばめられていて、とても楽しめる本です。 |
Beautiful Seoul
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No.2003023 2003/05/17
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Albertの写真館に展示してある韓国の故宮で買った、故宮を解説する写真本です。 始めて行った昌徳宮で、その建築物に圧倒され、必死で写真を撮影しましたが、一通り回っての一休みに、休憩所でこの写真集があるのに気がつきました。 まあ、はっきり言って、素人の私が撮った写真よりは、ずっときれいに撮れている(^ム^;)、しかも、詳細な解説が、韓国語と英語で書かれています。 韓国のことですから、おそらく、日本語版もあると思います。 仕事ではあちこち行っている私ですが、あまり観光地を回ることはしたことがありませんでしたから、たとえ行っても、この種の解説本を買うことは、少なくとも 国内では一度もありません。でも、めったに行けない海外では、なるべく買うようにしています。 適してきな遺物を見て感動することもすばらしいですが、解説書を買い、読み、疑問を感じたら調べる。これも、知的な遊びだと思っています。 |
明治東京下層生活誌
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No.2003022 2003/05/11
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これまで、江戸時代を中心に、庶民や武士の性格について書かれている本を紹介しておりますが、この本はちょっと志向が違っています。 まず、時代が「明治の初め」であること。次に、「下層生活」であること。それらに加え、これまでの本が、主に、一人の研究者の集めた 資料や、個人が書き残した内容がほとんどでしたが、この本は、出版された各種の書籍や新聞、雑誌などから、庶民の生活に関する記録となる 記事を集めたものなのです。 そこに書かれている内容は、生々しいものです。ただ、研究者が、冷静な目で見た観察からの記録ではなく、その現場そのものの内容ですから、 一般性という観点からは多少問題はあるのかも知れません。 江戸時代とは違い、時代が近いこともあり、興味深い内容が多い、この種の本としては珍しく、肩がこらずに読める「読本」です。 |
江戸町奉行所事典
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No.2003021 2003/05/04
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江戸時代の3奉行、勘定奉行、寺社奉行、町奉行、その中で、町奉行を中心に、その組織機構から始まり、捜査、裁判、牢の仕組み、 捕物武具まで。これらに加え、町役人(幕府の役職ではなく、市民の役職としての町役人です)の仕組みまで、幅広く解説した専門書です。 筆者は、甲冑や武具の専門研究家なので、捕物に関する武具には特に詳しく解説されています。 全編に渡り、豊富な図表を使って、江戸時代の主に司法系の町奉行所(町奉行所には、行政系の機能も含まれていました)を解説した本です。 テレビドラマや捕物帳物の書籍などでは、いいかげんな、時代考証無視な記述が多いですね。多くの人が誤解している江戸時代の本当の捜査司法制度について、 正確な記述がされている、これまた貴重な資料です。 明治政府の政策によって国民に対して行なわれたマインドコントロール。江戸時代は、暗黒の時代であった、新政府は、文明開化を行った近代的な政権だ。そんな嘘が、また一つ暴かれる書物でもあります。 明治政府要人(元勲などと奉られていますが)は、西南地域の無教養な田舎侍あがりが大半です。江戸幕府の洗練されたインテリ官僚組織とは、生まれも生い立ちも違う。 そんな前政権に対し、劣等感を持っていた明治政府を作った元勲(と、破廉恥にも呼ばせた人たち)たちが、意図的に江戸幕府を悪く宣伝していたことは明白になっていますね。 彼らのあまりの無知に、びっくりした江戸っ子の経験談は、口伝えですが、今でも東京の下町には数多く残っています。 まあ、政権が代わるということは、自らの正当性を主張するがあまり、前政権を悪く言うのは普通ですけどね。 |
幕末下級武士の記録
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No.2003020 2003/04/27
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幕末の時代、幕府の御徒(身分が家と家禄で保証されている旗本や御家人とは違い、一代抱えの身分の兵卒。ただし、実際は世襲であり、登城には草履持ちや中間を連れていたのですから、 立派な武士には違いはありません。今で言うところの、公務員一般職でしょうね)であった山本政恒が、明治34年の還暦までに至る半生を、日記などの資料をもとにまとめた「政恒一代記」を、校訂を付け編集したのがこの本です。 御徒としての職分やその勤務の様子を、絵入りで詳細に書かれている武士の文化を記録する資料です。 しかも、幕府に使えた武士としての記録だけではなく、手習いを始めた幼少時代から書かれている本書には、幕府の瓦解後、幼い子供をかかえ、 静岡藩に勤めた記録、そして廃藩後は浜松県、さらに、熊谷県、群馬県に勤め、明治20年代には、東京に戻り、帝国博物館などで働いていた記録が書かれています。 詳細な業務記録と履歴の他にも、各種の職人仕事や、江戸時代の遊戯、おそらく本人の趣味だったのでしょう魚釣りの話題や、公務で旅行した時の隠れ遊びの様子など、ほほえましい記録も含まれています。 江戸庶民の風習や生活を記録した、「庶民の目からの江戸」を記録した書物は多いですが、「武士の目からの江戸」の風習を残した書物は珍しく、貴重な資料です。 |
大阪新発見散歩
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No.2003019 2003/04/20
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大阪に在住の知人グループが編集した本です。 知人グループとは、某研究会のメンバーであり、私が@niftyで運営しているフォーラムにも参加し、「知的生産の技術」を研究している人たちです。 どんな経緯があって出版にこぎつけたのかは判りませんが、執筆しているのは、普通のサラリーマンがほとんどです。実際に自分の足と舌を使い調査をした。もちろん、この種の本に良くあるように、 実は店の宣伝だなんてことは一切ないそうです。真実の大阪の見どころと美味しいお店を紹介している本なのです。 写真はその最初の1冊です。この本の初版からはすでに4年が経っています。聴くところによると、その後、改定版も何度か重ね、時代に合わせて出版を続け、この種の本としては異例なほど良く売れている、 それも、大阪をおとづれる観光客ではなく、地元に住む人が買っているとのことです。大阪に住む庶民が、大阪に住む庶民のために編集していることが、読者にも感じられ、それで受けているのでしょうね。 私は6年香港に住みました。その経験を生かし、この本のような、観光客向ではない(もちろん、観光客にも使えるのですが)、生の「香港新発見」を書きたいと思っているのですが、残念ながら、出版社に知人もおらず、企画を 出す相手がいません。書ける自信はあるのですが、残念です。 |
墨東歳時記
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No.2003018 2003/04/13
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隅田川の東、墨東地区を対象に、「迎春の準備」の項から始まり、「枯野」に至る、52項目におよぶ。江戸時代末期から明治にかけての、下町庶民の性格習慣や風俗を 収集解説した本です。 著者の今井栄氏は、江戸時代から続く「白髭神社」の宮司さんですから、江戸っ子中の江戸っ子が書いた江戸庶民風俗志ということですね。 私の、江戸風俗関係書コレクションの中の1冊です。 |
大江戸趣味風量名物くらべ
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No.2003017 2003/04/06
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古本屋で入手した江戸風俗物の本です。上下2巻の組み物の内の下巻です。 内容は、各種の資料から拾って編集した、良くある江戸趣味本ですが、江戸時代の状況だけではなく、お店や場所など、現在まで(とは言っても、この本自体が、20年以上も前に出版されていますから、厳密には現在ではありませんが)を扱っています。 現在まで続いている老舗の料亭などは、現在の店の場所を、閉店してしまっているところは、いつごろまでは続いていたなど、消息がかかれているのが貴重です。 著者は研究者ではなく、一般の人です。東京を愛し、江戸の名残を愛した方なのでしょうね。 残念ながら、持っているのは、この下巻のみ、上巻は手に入れていません。古本屋ででも見かけた方は、ご連絡いただければ嬉しいです。 |
墨東綺譚画譜
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No.2003016 2003/03/29
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永井荷風の名作「墨東綺譚」は名作ですね。すでに老齢となっていた文豪と娼婦とのお話です。永井荷風の実体験に基づいて書かれているとも思われる小説です。 この小説は、朝日新聞に昭和12年の4月から6月にかけて連載されたものです。 新聞小説ですから、挿画がある。この挿画を書いたのが画家の木村荘八でした。 散逸していたこの挿画を収集し、1冊にまとめ、本文とともに出版したのが、この「墨東綺譚画譜」です。なんと、発表から42年後でした。 小説は、言うまでも無い名作ですが、挿画と共に読むと、その趣がこれほどまでに高まるのか、それが、最初にこの本を手にした時の感想でした。 今では入手困難なこの本です。間違いなく、私の秘蔵本の一つです。 |
日本神話と古代国家
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No.2003015 2003/03/23
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知っているようで知らない。それが日本の神話ではないでしょうか。古事記や日本書紀には、そんな神話が集められていますが、読みにくいこともあって、私は断片的にしか知りません。そこで、一般常識としての知識を 得たいと、この本を読みました。 神話の条件として著者は、「神々の物語が、一部の人の創作でなく広く民衆に支持され、宗教性と呪術性をもつこと」をあげる。「記・紀」編纂の過程で、また明治以降の歴史教育のなかで、日本神話はどのような潤色が加えられたか。 天孫後輪の話やヤマトタケル伝説、三種の神宝などの具体例をもとに、綿密な文献学的方法による研究を進め、古代国家の歴史と形成に果たした神話の実態を明らかにした労作。大学の先生が書かれた本なので、ちょっと固めです。読むにはかなりの努力がいると思います。特に、でてくる名称・人名などが覚え難い。どうしても、系図や系譜の話になるのですが、それが連綿と続くのですからね。 この種の、半分学術書のような本を読むには、私流の方法があります。 それは、理解しながら読むのではなく、解らなくても良いから、どんどん読み進めてゆくのです。そして、全体がどんな構成になっていて、そんな内容がどこに書いてあるかをだけ、覚えて置きます。そうして、後日、参照したくなったときに 読み直すのです。知識は頭脳に溜まらせなくても、書棚には置いてあるという方法ですね(^0_0^) |
幕末百話
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No.2003014 2003/03/16
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怖い本の紹介ばかりでは心苦しいので、幕末物をもう1冊。 明治も半ば過ぎ、篠田鉱造(1871-1965)は縛丸の古老の話の採集を思い立つ。廃刀から丸腰、ちょん髷から散切、氏族の商法、殿様の栄躍、お国入り騒ぎ、辻斬りの有様、 安静の大地震……。江戸時代のブームが、今また来ていますね。東京には江戸東京博物館が建設され、毎日多くの人が観覧しています。江戸についての本の出版も盛んです。 テレビの時代劇も、時代考証の裏づけのある作品が増えてきています。そんな江戸ブームは、なにも今始めてのことではなく、明治時代からこれまで、 何度となく起こっています。この本は、採集の作業は明治の半ば過ぎと書かれていますが、オリジナルが出版されたのは、そんな江戸ブームの一つの盛り上がりであった、 昭和の初期です。 この本は、まだ、実際の体験をした人が現存していた時期ですから、その記述には信憑性が高く、今となっては、貴重な資料の一つです。 ただし、あくまでも人が、人から聴いて書いた本ですし、体験者自身が書いたとしても、それはある一面からの記述でしょう。この種の記録は、多く集めれば集めるほど 良い、それらの資料の集大成にこそ、真実があるのですから。 私はそう思い、目に付いたものは集めるようにしています。ただし、現代の人の書いたものも入手はしますが、あまり信用はしていません。時代を生きた人が書いたものか、あるいは、生きた人から直接 取材して書いた本まを基本資料と考えています。昨今出版されている本は、本から取材しまとめただけですからね。聞きかじりの聞きかじりでは、そこからは真実は見えてこない。古い文体で読みにくくても、 私はこれらの資料を基本として江戸を研究して行きたいと思っています。 |
科学が死体に語らせる
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No.2003013 2003/03/08
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引き続いて怖い本ですが(^ム^;)、こちらは、法医学の専門家が書いた本です。 ケネディ暗殺の裏で囁かれた陰謀説の真偽は?著者は医学の専門家ですし、扱っている事件、検証にいたる論理など、専門的な内容ではありますが、小説仕立てで書かれていることから、 読みにくい専門書ではありません。 さすがに、ミステリー関係の出版社としては日本を代表する早川書房です。小説感覚で読める本です。 そういえば、最近、特にこの本のように、米国で出版された書籍には、専門的な内容を、小説仕立てにしてベストセラーになるものが多いですね。 もっとも、かつての日本でも、専門書をマンガにするのが流行ったことがありましたが、これも、一種の流行なのでしょうね。 |
科学捜査マニュアル
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No.2003012 2003/03/01
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ミステリードラマ・探偵小説大好きの私です。そんなドラマや小説を面白く読むための参考書です。 たった一本の毛、わずか言って気の結婚から、事件解明・犯人追跡のドラマが始まる。かなりマニアックな本です。いったい、だれが、こんなしょうもない本を買うのだろうかと思っているうちに、買ってしまいました(^ム^;) 書いている人たちには、警察関係者も医療関係者もいません、すべてがジャーナリストですから、多数の参考文献と取材を元に書いているのでしょうね。 そして、その参考文献リストがすばらしい。文庫本を中心とした、医者が書いた小説や法医学関係の本についても、新書やソフトカバーが中心です。 どれも安い本ばかり、がぜん、買い揃える気になっています。 犯罪の世界にのめりこみそうな自分が怖い(^ム^;) |
論理的に思考する技術
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No.2003011 2003/02/23
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タイトルから想像すると、難しい論理学の本のように感じてしまいますが、中身は、私達にも身近な「発想法」です せっかくいいアイディアがひらめいたのに、いざ企画書にまとめようとすると、いつの間にやら支離滅裂になりパニック状態、という経験は ないだろうか。そんな時、単なる思いつきの発想を、筋道の通った論理的な考えにきちんと整理し、表現するための技術が、本書で紹介する 「アウトライン発想法」だ。説得力ある企画書を、効率よくスムーズに作成したいビジネスマンの切り札となる一冊。この本のユニークな点は、筆者の「発想法」を実現するツールとして積極的にパソコンを利用していることです。 いわゆる、「アウトラインプロセッサー」を使っての技法なのです。 このホームページ(「知的生産新着ソフト評論」をご覧下さい)にも、アウトラインプロセッサーの紹介を多数していますが、それらを使いこなす ノウハウが「アウトライン発送法」と考えても良いでしょう。 知的生産の技術を追求する方には、ご一読をお勧めする本です。 |
旧暦はくらしの羅針盤
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No.2003010 2003/02/16
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紡績会社の駐在員として東南アジアに暮らした経験から、旧暦に注目した筆者による「旧暦をつかったお天気予測で商売繁盛!」レポートです。 ほんとうの季節感は、旧暦のなかにある。”商売はお天気まかせ”の繊維業界で、旧暦を20年以上研究・実践してきた「旧暦お天気博士」が活用法を伝授。 これで商売繁盛を狙う。古典や時代劇も、もっと楽しくなう!旧暦は、別名「農暦」とも呼び、農業とは切っても切れない関係にあります。そこには、数千年の生活の知恵が含まれていることも間違いがありません。 この本は、ビジネスマンとして繊維業界に生きている先輩の、商売と結びつけた旧暦の活用が書かれていますが、それだけではなく、私たちが漠然と「旧暦」として 呼び、また使っているこの暦についての詳しい説明が貴重です。 知っているようで知らない、「旧暦」とは何か。その謎を解き明かしてくれるのがこの本です。 |
書斎のある暮らし
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No.2003009 2003/02/11
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書誌家でありエッセリストの、林 望氏が知的生産の現場としての書斎について語ります。 書斎は男の城だ、という時代は終わった。本書の序には、菅原道真が「書斎記」という文章を書いて天皇に奉った話が載っています。 その道真公の書斎には、勉強をして書き出したものや、本から抄出した「単札」つまり、カードのことが書かれています。道真公も、カード管理をしていたのですね(^0_0^) 本と文章の専門家である林氏の書斎は、掲載されている写真を見ると、涎が出るほど羨ましいそれですが、真似ることはできなくても、その書斎つくりの哲学には、学ぶところが 多いと感じました。 ここに書かれているのは、一つの「理想」ではあるけれど、とてもとても、真似などすることはできないほどの高い次元の世界ではあるとしても、 知的生産を志す者としては、参考になる内容が網羅されています。いつかはきっと。 私の夢でもあるのです(^ム^;) この光文社のシリーズ「知恵の森文庫」本は、文庫本ですが、内容的には新書のような感覚ですね。値段もリーズナブルですので、いくつか買って読み始めたところです。 |
大江戸えねるぎー事情
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No.2003008 2003/02/08
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江戸の風俗研究が大好きな大学の先生であってSF作家の石川氏が書いた、江戸時代と現代を比較した文化論です。 かつて世界第一の規模を誇ったことの江戸は、じつに無駄の無い省エネ年として栄えた!この「えねるぎー事情」は、石川氏の「大江戸事情シリーズ」の第一作です。この後に、「テクノロジー」「生活」「リサイクル」とシリーズは続いています。 江戸時代の風俗研究本は、書かれた時代の関係もあり、読みやすいとは言いがたい文章の著作が多いなかで、現代作家が書くこのシリーズは、読みやすく江戸時代を知る、それが ひるがえって現代を反省する、まさに「温故知新」そのものの好書です。 |
江戸に就いての話
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No.2003007 2003/02/01
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「半七捕物帳」の作者であり、戯曲なども手がけた岡本キ堂氏の著作や新聞雑誌などに書かれたものから、江戸時代の風俗を扱った部分を抽出整理したのがこの本です。 その項目数は膨大な数にのぼっています。目次だけでも14ページも紙面を使っているほどなのです。 江戸風俗研究家でもあった岡本氏の著作ですから、内容の信頼性は高いものの、小説からの出典の部分もあり、脚色も含まれていると、私は思っています。そのままストレートに 書かれている内容が真実とは扱えないということです。 とはいっても、貴重な資料であることには違いはありませんね(^0_0^) |
江戸時代のさまざま
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No.2003006 2003/02/01
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いいたくないから行く年も行く年も待ってみたが、とうとう待ちきれない。一体色々な名を附けては出掛けて来る江戸時代の研究、 それがお揃いで面白可笑しい方へばかり曲がって居る。のみならず吉原だ岡場所だ、あぶな絵だ和印だと、八百八町から軽蔑された勤番侍や 店者の心持に堪能する。他の各時代の研究と何で行き方が違うのだろうか。で始まるこの本は、江戸文化研究かとして高名な三田村氏が心血を注いで書き記した本です。興味本位に流されること無く、正統な「江戸のさまざま」な風俗を解説した本です。 この本は、昭和4年に三田村氏本人が出版した本ですが、この本を底本にした本が多数今でも出版されていますね。 現在出版されている「三田村鳶魚」本は、現代語に書き直されていて、読みやすいのは良いのですが、雰囲気が今一つ。 昭和初期に出版されたこの本は、当時の言葉で書かれていますので、どことなく、大正ロマンの雰囲気がありますよ(^0_0^) |
数学の小事典
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No.2003005 2003/01/25
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学生向の新書「ジュニア新書」の中の1冊です。 高等学校を卒業して30年以上が経ちました。数学は好きな学科でしたが、なにしろ、勉強した期間に比べ、卒業後の年数があまりにも長い。すっかり忘れています(^ム^;) そんな数学のエッセンスを、易しくまとめたのがこの新書です。 すっかり堅くなった頭を、柔らかくときほぐしてくれる、頭脳のマッサージ本ですね。 とは言っても、なかなか手ごわいマッサージでもあります(^ム^;) |
江戸吉原図聚
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No.2003004 2003/01/25
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「江戸商売図絵」と同じ著者がまとめた、江戸時代の吉原をテーマにした絵と解説書です。 本の裏表紙には、以下のように印刷されています。 江戸風俗画の研究と模写に打ち込んできた著者が、肉筆浮世絵、版画、黄表紙や洒落本の挿話など、全盛時の吉原を描いた二百五十余点の絵画資料を正確に復元し、 それぞれに平易な解説を付す。「江戸商売図絵」同様、私には貴重な資料の一つです。 |
江戸商売図絵
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No.2003003 2003/01/25
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江戸時代の首都、江戸には、数え切れないほどの行商人が、ある者は天秤棒で商品を吊り下げ、あるものは扮装に嗜好を凝らし、歩き回って、その日暮らしの生業を営んでいました。 それらの商売のほとんどは、現在では見かけることができなくなってきていますが、それらを知ることは、江戸時代に書かれた書籍や、江戸時代を扱った時代小説を読み解くのに 助けになります。 この文庫本にまとまられた小さな本は、日本画出身の挿絵画家であり、江戸風俗画の研究者である作者が、主に江戸時代の風俗本に描かれた挿絵を中心に、絵と商売の解説をしています。 この本は、読むための本ではなく、江戸商売の百科事典のような貴重な資料です。 |
鸚鵡籠中記
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No.2003002 2003/01/19
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「温故知新」と言いますね。古いこと、歴史を知り、現在の新しい事象と比較することにより新たなアイディアを生む。正しいと思います。 歴史的な事実は、多少の歪曲はあっても、各種の書籍にその記録が残り、広く知られています。しかし、古い昔の普通のこと、生活のことなどは、 なかなか知ることができません。 確かに「考古学」などの学問が、昔の生活様式などを知る一つの方法にはなっていますが、「考古学」は、あくまでも出土品などの 物から推測する方法なので、「絶対」ではありませんね。あくまでも推測。新たな出土品が発見されると、それまでの定説が一夜にして変わってしまうこともある。 不確実性を許容した学問ですね。それはそれ、ロマンはあるのですが、それでは、本当のことはわからないのです。 そんなとき、最も信頼できるのが、筆まめな個人が書いた日記です。 この本は、尾張藩士であった「朝日重章」の、貞享元年(1684年)から享保二年(1717年)までの、34年間の日記です。 筆者が命名した「鸚鵡」の意味は、「おうむの口真似のように、あらゆる見聞をそのまま書いた」ということなのだそうです。書かれている内容には疑う余地はありません。 ただし、伝聞の部分は、それなりに、割り引いて読まなければなりませんけどね。 尾張藩士の生活実録や、赤穂浪士の討ち入りを伝える伝聞など興味深い内容です。 |
「馬上行動」組織革命
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No.2003001 2003/01/18
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家電業界の中では、どちらかというと軽く見られている三洋電機です。新聞などの「大手家電」とタイトルを付けた観測記事などでは、しばしば その「大手」の中からは外されています。本社が東京ではないハンディキャップもあると思います。そんな会社ですが、最近になって見直しされていると感じています。 大手家電の中では、唯一、オーナーが君臨する企業でもある三洋電機です。そのことが、これまでは嫌われていたとさえ感じていました。でも、本当にオーナー経営が良くないことなのでしょうか。 確かに、人事面などでは、必ずしも公正でない部分もあるかも知れません。でも、トップから末端までが、すべてサラリーマンであるとしたら(多くの企業がそうですが)、トップといえども末端からの 成り上がり、つねに周囲と競争して勝ち抜いてきた人がトップになります。悪く言うと、他人を蹴落としてきたから、トップに座っているのです。 一方オーナー企業の場合は、将来のトップになるべき人材は、初めから帝王学を学びながら育てられます。若い頃から経営の重要な局面を体験しながら育っているのです。成り上がりには無い良さがあるのではないでしょうか。 また、常に周囲を見ながらの決断では、意思決定が遅くなります。オーナー企業ならば、決断は個人でできます。即断も可能です。過去に経験をしたことが無いほどの不況の真っ只中の現在、経営の決断のスピードこそが、求められている時期なのではないでしょうか。 また、トップからの指示の基に、古くから中国への進出を果たしてきている三洋電機です。中国ビジネスには経験と実績を持っています。手前味噌ながら、今こそ、三洋電機が注目される時代になってきていると、 私は感じています。 この本は、そんな三洋電機と、その組織を率いるトップリーダーを取材して書かれています。不況克服の、一つの方向性が、この本には書かれています。 |